竜平会の自主トレ おおさき福男をめざして田村、中村貴、持丸と挑戦 松山さんは一歩も動かず

鹿児島県曽於郡大崎町(そおぐん おおさきちょう)

松山竜平選手は毎年生まれ育った故郷で自主トレを行っている。チーム松山、この自主トレ組は“竜平会”と呼ばれ、毎年後輩たちも参加している。2024年の竜平会メンバーは、カープ最年長松山竜平を筆頭に、曽根海成、田村俊介、そして初参加の中村貴浩、持丸泰輝という顔ぶれだ。

広島からだと片道合計でおよそ4時間半の距離にある大崎町。到着し、早速松山さんに挨拶しに行ったところ「本当に来たの?」と笑っていた。「ロケとかじゃなくてプライベートでよく来たね(笑)」と。

 

■ おおさき福男を目指して

竜平会では毎年の恒例行事がある。「おおさき福男福女選び」という地元のイベントだ。一般の部は中学生以上の参加で108名が募集され、旧国道220号線に面した大崎一之宮の都萬神社に用意されたゴールゲートを目指し、「1年(365日)を走り切る」に掛けられ365メートルを競う新年のイベントである。

なだらかな坂道から始まり、急カーブからの急勾配の登り坂を一気に都萬神社まで駆け上がるハードなコースで、一番先にゴールに着いた方がその年の福男福女となる。

竜平会からの参加は中村貴浩、持丸泰輝、田村俊介、そして松山さんから「走る?」と言われ、急遽私を入れての4人となった。ちなみに曽根くんは前年度5位で今回からは応援組に、そして大将の松山さんは過去に一度も走ったことがない。

レース前は出場者の怪我が無いようにと超癖の強い鹿児島弁ラジオ体操で準備運動。癖になるのでぜひネットで調べて聴いてほしい。

「1番に帰って来ますね」と大将松山さんとグータッチを交わし、スタート地点へと移動した。朝7時、おおさき福男2024の幕開け、キツ過ぎる登り坂、走り出してすぐに限界を迎えた。そして全ランナーを苦しめる最後の急勾配。沿道からは地元の方々からのあたたかい拍手と声援が飛ぶ。「あとちょっとよー!頑張って〜!」ゴール手前で曽根くんからの「ゴッホさーん!!がんばれー!!」という声援がすごく聞こえた。

松山さんの姿を探したがスタート地点に移動する直前にグータッチを交わした場所から一歩も動かず大きな焚き火の前にいた。寒かったから仕方がない。

結果、福男は中学3年生の陸上部の男の子が選ばれた。我々は惜しくもなかった。

 

 

■ 竜平会の可愛い弟たち(中村貴浩は松山さんをお父さんみたいと例える)

今年の竜平会について松山さんと曽根くんが感じる部分は、去年より全体的な練習量がはるかに増えたというところ。走り込みであったりスイング量だったりと、みんなが年齢を1つずつ重ね、更に戦える体作りに取り組んでいる。

-ー曽根海成選手・28歳、松山さんに次いでの先輩になります。例年との違いはありますか?

「松山さんは今年も元気です。いやバカ元気です(笑)今年は後輩たちがまた新しい顔も加わって若い子たちが多いので、やらしている分、こっちもやっぱやらないといけないなと言う風に一緒に切磋琢磨して張り合ってやってます」

 

ー向上させたいところや課題は?

「とにかくバッティング頑張ります。やっぱり簡単に三振しないバッターを目指してっていうのを松山さんとかに聞きながら、打席での考え方であったり、こういう練習したほうがいいよとか、色んなアドバイスをもらいながらやっていきたいなと思ってます」

 

ーさらに若い子たちと切磋琢磨しながら、松山さんの二番隊長みたいな頼れる先輩ですね

「やっぱり松山さんは大きい背中してます。頼りになるというか、凄い方だなぁって。一緒に過ごすことでより感じます。あ、でも友達みたいなもんですけどね、先輩ですけど(笑)今年も松山さんの背中を追いながら、自主トレを一生懸命に頑張っていきます」

 

この自主トレでは誰よりも大きな声をだして、指示や行動などすべてに率先して動いていた。例年に比べて練習量がはるかに増えたと感じる部分は間違いなく曽根海成の周りを巻き込む今年に賭ける努力という部分だろう。

 

 

 

ー田村俊介選手、2年連続で竜平会へ。またこの場所に帰ってきた理由は?

「去年1年間松さんに教えてもらって、貫いてやってきた結果が良い結果に繋がったので、1年では時間が足りず、まだまだ体に染み付いていない部分をもっともっと深く教えてもらおうと思ってお願いしました」

 

ーこの自主トレでは周りの先輩たちとどのように一緒に過ごしていますか?

「全員が左打ち、でもみんなタイプが違うので凄く勉強になります。インコースのさばき方が上手かったり、レフト方向に打つのが上手かったり、それぞれ違う良いところがあるのでそういうところを真似したり盗めるようにバッティング練習を僕は個人的にやっています」

 

ーここから2月からスタートする春季キャンプに向けてどう仕上げたいですか?

「自分の体にもっともっと深く技術を染み込ませるためにしっかりとやりたい、キャンプ初日から最高の状態でスタートを切れるような体を作っていきたいと思います」

 

この自主トレでは毎日満足いくまでバットを振ってきた。田村俊介が想い描くプロ3年目での活躍を掴むために。1年通して戦える体を作り、満足いくシーズンを過ごしてほしい。

 

 

 

ー持丸泰輝選手、今年でプロ5年目、どんな想いから鹿児島自主トレに?

「プロ入って4年間ずっと1人でやってきて、正直限界だなっていうのもありましたし、技術向上っていう部分で自分の知識だけではなかなか伸びないなと感じた部分もあったので、そろそろ誰かの手を借りないとちょっと終わるなって、そんな危機感で松さんにお願いしました」

 

ー大先輩の松山さんからみんな年がバラバラですが、常になごやかなムードができてますよね?

「1番はやっぱり海成さんが色々間に入ってくれたり、自分たちが変な距離感を持たないように、すごく和やかにしてくれています。中心となって指導してくださったり、松さんと一緒に自分たちの面倒を見てくれてるなって感じます」

 

ーこの自主トレでどういう風にパワーアップしたいですか?

「やっぱり4年間、数字を見てもひどいんで、バッティングに関しては、やっぱりそこを向上させるために松山さんにお願いをしました。もちろん守備も大事なんですけど、とにかく打って打って打率をちょっと求めながらアピールして1軍に残れたらなと思ってます」

 

打撃向上を求めて松山竜平に弟子入り、もちろん捕手のトレーニングも今まで以上に取り組んでいる。さらには内野ノックも積極的に受けたりと、今季はより貪欲に一軍出場を目指している。普段から誰よりも真面目に取り組む姿勢はきっと良い結果にも繋がるはずだ。

 

 

 

ー中村貴浩選手、松山さんへの弟子入り、初参加のキッカケは?

「シーズン中に松さんに『自主トレ来ないか?』と声をかけてもらいました。参加しようと思ったキッカケは2月のキャンプの時に『タイプ似てるから、ちっちゃいバッティングだけはしないようにね』と言われた時に自分の中でビビビっときたときです」

 

ーこの自主トレを完走し、どんな成長を見せたいですか?

「今自分が求めているものは確率を上げる事と、バッティングの柔らかさを求めてやっているので、そこができるようになればもうちょっと率も残せると思うし、そんなに力を入れなくてもホームランを打てるんじゃないかなという感じですね」

 

—その感触は現時点ではどうでしょう?

始まってもう2、3日くらいで、良い回転かけてやってたら、軽く打っても打球がスーと伸びていく感じで、結構手ごたえがあったんですけど、松さんに良い感じですって伝えたら『多分一回狂う時がくるから』って言われたんですよ。そしたら第1クール終わった位でちょっと狂ってきて、すみませんちょっと狂ってきましたって報告しました。松さんからは『難しいなりに、その壊れたときの修正方法を、こうすればこう打てるみたいな感覚を知っておけば大丈夫だよ』とアドバイスをもらいました」

 

ーでは最後に、今季どんな1年を過ごしたいですか?

「よく龍馬さん(西川龍馬)が抜けて、中村貴浩がレギュラーとか言われるんですけど、僕なりに、自分なりのペースで怪我せずに1年間しっかりやることをやれば、自ずと結果はついてくると思っています」

 

周りの言葉はうまく流して、一歩一歩コツコツと、それができるのも彼らしさ。誰もが驚くスイングの速さで今季は待望のホームランを見せてくれるはず。

 

 

 

 

 

今回初めて竜平会に参加させていただいた私ですが、やはり松山さんの周りは愛に溢れていた。2024シーズンはみんなが怪我なく一年を充実して過ごせることを願う。

みんなでシーズンオフには嬉しい1年の振り返りができますように。

 

ライター・ゴッホ向井

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