ドラフト1位ルーキー常廣羽也斗の登板を楽しみに待つ。母の大好きなBUMP OF CHICKENを登場曲にマウンドへと歩む
「だいぶ状態も上がってきて、順調にメニューを進めています」。
表情の明るさからもその様子が伝わってきた。
2023年ドラフト1位で指名を受け、2球団の競合の末、カープと縁があった。
今季がルーキーイヤーとなる常廣羽也斗投手。
最速155キロの本格派右腕で、完成度は今ドラフトNo. 1と呼ばれ、即戦力と期待された。
新井貴浩監督からは、
「この時期は焦ろうとしていなくても焦ってしまったり、体に力が入りいつも以上に疲れてしまう。自分のペースで焦らずにやって欲しい」と声をかけられた。
春季キャンプは一軍にも合流したが、焦らずにまずは身体作りを重視していく。
現在トレーニングをおこなっている大野練習場でも“飛ばしすぎないように”と調整を続けている。
畝龍実コーチに話を聞くと、
「順調にきている。常廣はただガムシャラに放るんじゃなく、どこに力を入れたら球に伝わるかわかってて、凄くいいバランスを持っている。すごく良いピッチャーだから楽しみ」と絶賛していた。
■ 目指していたプロ野球選手に
カープに入団してから話をしてみたい先輩は?という質問の中でよく名前が挙がっていたのは同郷・大分出身の森下暢仁投手だ。
「森下さんには精神的な部分でうまくいかないときのメンタルの回復方法を聞いてみたい」と言っていたが、春季キャンプの休日に食事に行けたそうだ。
森下が自身のInstagramに「なんかもー友達になりました」と常廣の写真を投稿していた。
このときの食事会の話を聞くと「いえ、先輩です(笑)。優しくて、楽しかったです」と振り返ってくれた。
お互いの通っていた中学校が近かったらしく、大分の地元の話でも盛り上がった。
常廣は森下のことを「すごく落ち着いていますし、心にブレがない、いつ見ても同じ態度で、そういうところも凄いなと感じます」と話す。
大抵の先輩たちとはもう話をすることができ、チームにも慣れてきた。
そしてこちらも慣れてきた寮生活では最近読書を始めたらしい。
「何を読んでいるか具体的には内緒ですが小説を読んでいます。あまり今まで本を読んでこなかったので今限定かもですが(笑)」と話してくれた。
何を読んでいるのかは深追いはしないが、確かに読書をする姿はとても似合う気がする。
■ 一歩ずつ。目標に向かって。
常廣が野球を始めたのは小学3年生の頃だ。両親からいつも言われていたのは“健康第一”。
「勉強や野球など結果を求められる場面は色々とあると思うけど、気楽に楽しく、健康第一でいてくれたら良いよ」と言われて育った。
子供の頃から野球でも勉強でも、やると決めたらとことんやり切る力は強かったらしい。
親から言われた“楽しくやりなさい”という言葉も大事に頑張ってきた。
家族のエピソードが出たのは他にも登場曲について話を聞いたときのことだ。
まだ曲は決まっていないが「母がBUMP OF CHICKENのファンなので、その中から曲を選びたい」と言っていた。
マツダスタジアムで「ピッチャー 常廣羽也斗」とコールされ、マウンドに歩いて向かうとき何の曲が流れているのだろう。
答え合わせができるのはそんなに遠くはないはずだ。
プロ1年目を歩み始めた常廣羽也斗。これからの目標は『勝つ』。
「チームとして勝つことはもちろんなんですけど、個人としてもチーム内の競争に勝ち、何事においても勝負の世界なので“勝つ”という事を意識してやっていきたい」と意気込みを聞かせてくれた。
勝つために、プロに入るために頑張ってきた大学時代。青山学院大学野球部の恩師・安藤寧則監督からは言われて印象に残っている言葉がある。
『正解を選ぶんじゃなくて、選んだ選択肢を正解にしていく努力をしよう』である。
チームは3月29日からいよいよ開幕戦だが、今は焦らずに、ひとつずつ順調にトレーニングを積んでいる。
先日おこなわれたマツダスタジアムでの新入団選手のお披露目会ではユニフォーム姿で笑顔でスタンドのファンに手を振る常廣を見られた。
本人は「ベンチからスタンドのファンの皆さんとの距離が凄く近かったです。めちゃ見えますね」と驚いていた。
次はマウンドで投げる姿を見たい、という気持ちは当然ある。だが、理想的な状態で一軍で登板するのを楽しみに待ちたい。
どんな選択をしても成功だと最後には思えるように、その道を今歩んでいるのだから。
ライター・ゴッホ向井