未来に期待したくなる最終戦を終えて。プロ初勝利の滝田一希。同期・常廣の一軍デビューを観ていて「嬉しい反面悔しかった」

カープの2024シーズンが終わった。

結果はセ・リーグ4位。一時は首位を走る勢いもあったが、9月に入り失速。

残念ながら2年連続のクライマックス・シリーズ進出とはならなかった。

 

チームの最終戦では新井貴浩監督が試合終わりに「来シーズンは様々なことが変化する年になると思います。覚悟と信念を持って、強いチーム、そして強い選手を育てていきたいと思います」とマツダスタジアムに集まった3万2千人を超えるファンの前で挨拶をした。

この日の最終戦では、4番スタメンでプロ初出場の高卒ルーキー仲田侑仁、7番には同じくプロ初出場の内田湘大が入り、両選手ともにプロ初ヒットを記録。

投手ではルーキーの滝田一希や髙太一もプロ初登板し、滝田はプロ初勝利、髙はプロ初ホールドを手にした。

他にも田村俊介、二俣翔一のタイムリーヒットや2021年以来の一軍マウンドだった高橋昂也の初セーブなど、若鯉たちの躍動はカープの未来に期待をしたくなるような光景だった。

シーズンが終わった瞬間から、すでに来季への戦いが始まっている。

滝田一希が手にしたチャンスと初勝利

ある日、北海道にいる家族から「ピッチング良かったね〜!いつ一軍上がるの?」とLINEが届いた。

いつも気にかけてくれている姉たちからの嬉しい連絡だ。家族の存在はチカラになると滝田は話す。

 

 

9月中頃だったこの時期は一軍も残り試合が少なく、CS進出争い真っ只中だったため、一軍未経験の選手にとってはここから上にあがるチャンスは少なかったかもしれない。

しかし、同期の活躍を目の当たりにして、気持ちが上向きになった。

同じルーキーで同い年の常廣羽也斗が9月15日にマツダスタジアムで行われたDeNA戦でプロ初登板、初先発し、見事に初勝利を挙げたのだ。

デビュー戦は5回を投げ1失点、なんとか粘り強く投げチームの連敗をストップさせた。

 

ドラフト1位で入団した期待の投手がついに一軍登板で初勝利と広島中が盛り上がったその翌日、滝田は由宇のマウンドに立っていた。

「常廣の良いピッチングをずっと観ていたので、嬉しさ反面、正直悔しい想いもあったので“負けてはいられない”と今回は常廣が尻に火をつけてくれた感じです」。

はじめに書いた“家族からの連絡”がきたのはこの日だった。

9月16日由宇球場で行われた中日戦で滝田は先発登板し、内容は6回92球を投げ被安打3で与四球1、奪った三振は6つで無失点ピッチングだった。

春先は制球に苦しんだが、横山竜士二軍投手コーチや小林幹英三軍投手育成強化コーチに「コースのキワキワを狙うんじゃなくて、大雑把で良いから強い真っ直ぐをゾーンに通せるようにしよう」とアドバイスをもらい、腕の振りを緩むことなく強い球を投げられるようにと意識して取り組んでいた。

「変化球も使える球がチェンジアップだけだったので、1つストレートに見えるように曲がる球を試してみたら良い形で抑えられたので良かったです」とこの日の投球を振り返った。

プロ一年目、壁にも当たったが一歩ずつ歩んでいる道にも自信が付いてきた。

滝田の座右の銘は『名もない雑草にも陽は当たる』である。

諦めずに努力をし続けることが大事だとグローブにも刺繍で刻んでいる。

「今は野球をやっていてすごく楽しいですし、同期のみんなが頑張っているので負けずにやろうと競い合っています」。

カープの2024年シーズン最終戦。

満員のマツダスタジアムのマウンドの上に滝田の姿があった。

 

 

この日一軍登録された滝田は引退試合での先発登板だった野村祐輔のあとを引け継ぎ4イニングを投げた。

チームは勝利し、滝田には嬉しいプロ初勝利が付いた。

「新井監督からはベンチで『緊張したか?』と聞かれたので、オープン戦の時よりいいボールを投げれましたと答えました。『良い球もいってたし良かったよ』と言っていただきました」。

そしてこの日、球場には姉2人が観に来てくれていたそうだ。

「姉には最初鼻血のことを聞かれ『なかなかマウンドに出てこなかったから何かあったのかと思った』(登板直前に鼻血が出るアクシデントが起きた)と笑われましたが『ゆっくり寝てまた頑張れ』と言ってもらいました」。

今シーズン、最後の最後で滝田はチャンスを引き寄せた。一心に努力を積んできたからだろう。大切な人たちにも嬉しい報告ができた。

来季はさらなる飛躍を期待したい。

 

ライター・ゴッホ向井

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