祝ゴールデン・グラブ賞初受賞の矢野雅哉。「キクさんに野球で恩返しをしたい」

12日、ゴールデン・グラブ賞の受賞選手が発表され、セ・リーグの遊撃手部門ではカープの矢野雅哉選手が初受賞された。

矢野の得票数は218票で、2位のヤクルトスワローズ長岡秀樹選手(67票)に151票差をつけての選出となった。

 

 

『ゴールデン・グラブ賞は必ず獲ります』カープの新入団選手発表会見の場で矢野はこう明言していた。

初受賞を受けて矢野は「初めて三井ゴールデン・グラブ賞を受賞する事ができ本当に嬉しく光栄に思います。今年で終わらずまた来年も受賞出来るように日々努力して、少しでも投手陣やチームの力になれるように頑張ります」と喜びを表した。

武器は“誰もアウトにできない位置から強い送球でアウトにできる肩”だ。今シーズンはその肩の強さや守備範囲の広さ、

そして師弟関係にある師匠・菊池涼介選手との鉄壁の二遊間で何度も球場を沸かせた。

以前、矢野に守備で心がけていることについて聞いたときは、
「練習の時はどうやったらうまく取ってうまく投げられるのか?どうやったらそのボールに対してうまく入れるのか?とか技術面で色々と考えるんですけど。試合になったらもうアウトにすることだけ、バウンドが合わなくても、うまく取れなくても、アウトにすることだけを考えて守っています」と話していた。

いざプレイボールがかかると、そこからはどんな形でもいいから目の前の1つのアウトを必死に取りに行くことだけを考えている。

 

■ 「負けてはいられない」

1年間、この意識を常に持ち続けながら戦ってきた矢野雅哉。亜細亜大学からプロに入って今年が4年目だった。

“ヒット性の当たりをアウトにしてくれてる”

チームメイトからの信頼も厚く、間違いなく一流の守備力を誇っていた矢野だが、課題はバッティングと言われてきた。
昨シーズンは93試合に出場するも打率は.185となかなか思うような数字は残せなかった。

「守備はずっと自信を持ってやっているので、打撃でもっと率が残せるようになれば絶対にレギュラーで試合に出られると思う」と矢野自身も感じていた。

今年の春季キャンプでは誰よりも早く球場に姿を現し、休日でも関係なく、とにかく沢山バットを振り続けていた。そして「良いバッターに話を聞かないのは損」と積極的に先輩たちにも話を聞きに行った。

 

 

打撃の進化を求めて挑んだ今シーズンは自己最多137試合に出場し初の規定打席到達、そして打率は.260で放ったヒットも112本と初の年間100安打を超えた。

新井貴浩監督も「守備はスペシャル。彼が頑張って、今はショートで出ている」と開幕してからのレギュラー争いに言及していた。

今季は1年間試合に出続けながら結果を出さないといけない立場を初めて経験した。
チームが優勝争いに加わっていた夏場には「試合に出ている以上、本当に責任を感じながら毎試合必死に食らいついて頑張ってます」と話していた。

 

■ キクさんに野球で恩返しをしたい

師匠・菊池涼介の話になると「あの人は本当に凄いです。凄すぎて異次元すぎて…」と話す。

「ずっと二遊間を一緒に守っているんで、2人でゴールデン・グラブを獲りたいっていう目標はずっと持っています。これだけは本当に叶えたいです」。

毎年1月になると師弟は集まる。静岡県で行われる“TEAM KIKUCHI”の自主トレだ。

「キクさんとは1月の自主トレからずっと一緒にいさせてもらって、シーズン中も食事に連れて行ってもらったり、もっとできるよっていう話もしてくれます。キクさんに野球で恩返しができるように、今それが少しずつ叶う、 叶えられる方向にいけているんじゃないかなって思います」。

—将来欲しいなと思う背番号はありますか?

「レギュラーを取ってからじゃないと強くは言えないですが、心の中にある番号は4か6です。本当は6番が欲しいんですけど、付けるべき人が他にいるかなって」。

—ちなみに師匠・菊池涼介選手が付けている33番については?

「いつでも狙ってます(笑)。いつでも取れるように。でも、やっぱりすごいですよね。33を付けたことを想像しただけで、周りからどう思われるんだろうな?って。33番といえば今はキクさん。それを自分のイメージに変えないといけない。大変だろうなと、わかっています。ただすごく尊敬をしてるから、いつかは超えたい存在です」。

師匠への恩返しはグラウンドの中で、師弟コンビで、カープの二遊間コンビでゴールデン・グラブ賞を。この時代の彼たちを、カープを応援できていることを幸せに思う。

 

 

ライター・ゴッホ向井

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