もう1年、チャンスをもらえた前川誠太。誰よりも目立って支配下を勝ち取りにいく
育成3年目のシーズンを終えた前川誠太。
2024年はファームで64試合に出場し、173打席、打率.277という成績だった。
「この1年は今までで1番試合にも出られて、打席数も3年間で1番もらえました。率的にも1年目、2年目よりも充実した打席や内容が多かったと感じていて自分的には良かったかなと思います」。
プロ1年目は50試合出場で打率.198、2年目は56試合出場で打率.185だった。
変化させたのは“考え方”で、相手の球種を自分なりに読み、打席の中でしっかり考えながら入れたことで次に生きる打席が増えたという。
普通のカウント時と追い込まれてからの入り方もガラッと考え方を変えてみたことが上手くハマったらしい。
今年の1月には毎年静岡県で自主トレを行っている先輩・菊池涼介選手と過ごさせてもらった。
「もちろん守備はキクさんに色々と教わりたいと思っていましたし、バッティングも僕はヘッドを使って打つタイプなんですが、キクさんもヘッドを上手く使い、あれだけ遠くに打球を飛ばせる体の使い方は凄いなと。矢野さん(矢野雅哉)にお願いをして、キクさんに自主トレに参加したい気持ちを伝えてもらいました」。
菊池からは「体の使い方が全くできていないから0から色々とやっていこう」と声をかけられて、自主トレがスタートした。
初めてのことが多く、最初はまず慣れることに時間がかかり、練習に付いていくことすら難しかった。
キャッチボールを一緒にしているときやトレーニング中でも「俺はこうしてるよ」と気になったことがあるたびにアドバイスをくれた。
「テレビで観ていたら、ゴロを軽々しく普通に捌いたりしているように見えちゃうんですが、一緒に練習をさせてもらったり間近で動きを見ていたら、体感やバランスなど体の使い方をすごく意識されていたので、やっぱりかなり考えてプレーしているんだなっていうのが印象に残っています」。
ゴロを1つ取るにしても地面からの反発を利用して勢いを使って送球するとか、バッティングでは体の使い方次第でどれだけ遠くへ打球を飛ばすことができるかなど、菊池涼介という一流選手の経験値や考え方などを惜しみなく刷り込んでくれた。
■ 己に勝ち、チーム内競走でも勝たないといけない
来シーズンに向けて、前川は1つの決断をした。シーズンが終わり、フェニックスリーグに参加していたが、途中抜けて1人早めに広島に戻ってきた。
理由は元々シーズン途中から痛みがあった左足首の手術である。
「5月、6月からもう痛くて、でももう3年目なんでそんな事を言ってられなかったんで、なんとか耐えてオフまではもう走り抜けると決めていました。それでシーズン終わってからトレーナーの方とも話をして、手術を決めて球団に伝えました」。
球団からは「来年に向けてしっかり治せ」。と言ってもらえた。そして育成での再契約でプラス一年のチャンスをもらった。
「早くて来年春のキャンプ終わりぐらいかもしれない。開幕には絶対に間に合わせたいし、とりあえず1日でも早く復帰できるようにやっていきたいです」。
手術をして、入院しながらのリハビリ期間。
早く痛みが無くなり、再びグラウンドで野球ができることだけを考えながらモチベーションを保った。
「お見舞いには先輩方も来てくれました。中でもやっぱりキクさんが来てくれたのがめっちゃ嬉しかったです。『来年も残れるんだよな?』って。気にかけてくれていることが嬉しいですし、頑張って恩返ししないといけないです」。
前川の好きな言葉は“己に勝つ”。
この言葉に出会ったのは高校生のときだ。新しく買ってもらったグローブに「この気持ちを常に持って頑張れ」と父親が刺繍を入れてくれたそうだ。
「来季はもう4年目ですし、本当に気合いを入れて自分に勝つしかない。もう何を言ってもこの1年が勝負になってくるんで、誰よりも目立って支配下契約を勝ち取り、一軍の試合に出場したいです」。
まずは復帰に向けてこのオフシーズンを来季への強い想いを持ちながら過ごしてほしい。
感覚から考える力へ。野球への向き合い方もガラッと変わった。来年はさらに成長した姿をグラウンドで見せる。
ライター・ゴッホ向井