「お母さんのおかげで今の自分があります」ルーキー内田湘大、カワウソのデブリンとの物語

ゴッホ「母の日は何かしたりするん?」

内田「お金に変えられない価値のあるものが良いなって思うんで手紙を書こうかなって思ってます」

 

素敵すぎる。これが18歳の返しだろうか?ドラフト2位でカープに入団したばかり、高卒ルーキー内田湘大と母の日について話したときのことを今日は書かせていただきます。

ドラフト2位ルーキー 内田湘大

 

「死ぬ気でやれ、死なないから大丈夫。」

 この言葉は母親から言われて大切にしている言葉だそうだ。内田ママはとにかく元気で行動力がすごい方らしい。行動力の話でいうと内田に「今年1番笑った出来事は?」と聞いたときに返ってきた話がある。

 

「親が長野から広島まで10時間かけて車で遊びにきたことです()。なんか前日に急遽暇になったから行くわって連絡きて、たまたまできた休みで僕に会いにきて、すぐにとんぼ返りしました。行動力凄すぎて笑ってしまいました」。

 

たしかに凄い行動力だ。往復20時間、滞在時間の何倍も移動している。そんな母親とはほぼ毎日のように連絡をとるらしく、最近きた連絡は、「弟が家の庭にテントを張って、たこ焼き器でたこ焼き作って食べて、夜はそのままテントの中で寝袋で寝て夜を過ごしてるよ」だそうだ。弟にも興味が湧いてきてしまった。

 『内田の弟が実家で1人キャンプ』という強めのエピソードで話がブレそうになったが、またお母さんとの話題に戻そう。野球で1番嬉しかった出来事を聞いてみた。

 

 「高校3年生の夏、地方予選の二回戦のときに親が観に来てくれた試合なんですけど、負けてる場面で逆転ホームランを打ったことです。僕は親に恩返しをするつもりで高校野球は取り組んでいたので、嬉しかったです」。

 

 親に恩返しをという気持ちで頑張ってきた高校野球。これには苦しかった時期に支えてもらった母親との話がある。

 

 「高校時代になかなか結果が出ずに、ひとりぼっちになってた苦しい時期がありました。高2のときに、もう野球も辞めたいなって。僕あんまり周りに相談とかができないタイプで、チームメイトにも家族にも弱みを見せたくなくて黙ってたときがあったんです。そんなときにいきなり母親が、長野から寮生活をしていた群馬まで会いに来たんです。僕はそのときご飯を断ってしまいました。双子の兄も同じ野球部だったんで、兄だけ母親とご飯に行きました。そしたら帰ってきた兄から「これ、お母さんから湘大にって、買ってきたらしいよ」ってカワウソのぬいぐるみを渡されました。」

 

 カープに入団が決まり、大野寮に入るときに持ち込んでいたカワウソのデブリンだ。どうやら母親は悩んでいた息子の様子がおかしいと気づいていたらしい。少しでも癒しになればと思って、長野から持ってきたぬいぐるみだった。この出来事で内田はすぐに前を向けた。

 

 「ひとりでずっと抱えていたものが軽くなりました。ちゃんと野球に気持ちが戻れましたね。目標はプロ、ここで逃げちゃダメだって」 

この頃から内田にとっての高校野球は自分の為以上に「親に恩返しをするつもりで頑張る」に変化していった。

 

「小さい頃からずっと応援してくれてたし、寮生活で支援もしてくれた。その感謝を忘れずに野球と向き合っていました。自分の為に頑張るのも大事だと思うんですが、親に恩返しをするつもりでやっていたら人一倍頑張れました。練習に身が入って、実力以上のものも出て結果もついてきたんです」。

 

 

■宝物は全て広島に持ってきた

 

内田は宝物と一緒にプロの世界に入ってきた。ツラい時期を支えてくれたカワウソのぬいぐるみもそのひとつだが、実は他にもある。高校の寮生活のとき、実家からたまに服や食べ物など仕送りが届いたという。そこには毎回必ず母親から「沢山食べて大きくなってね」などメッセージが添えられていた。

 

「当時もらった手紙や封筒などは全部捨てずに取ってあります。広島に持ってきて大事に持ってますよ。母は知らないと思いますが()

 

内田に最初に聞いた母の日のプレゼントが『手紙』というチョイスだったが、自分が心の支えになった経験から出てきたものだったんだなと、ここで気づいた。

 

 「野球を始めたころから、キツいときや苦しいときにいつも1番近くで支えてくれたから今の自分があるので、お母さんのおかげで入らせてもらったこの世界で恩返しをしていきます。」

 

大好きな息子が元気に頑張っているだけで親は嬉しいだろう。そして毎日が心配だ。プロの世界で活躍を見せるという恩返しに向けて、内田湘大は自分を磨く。

取材・ライター/ゴッホ向井ブルー

 

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