「アレ」への熱気充満の甲子園で3連敗 がむしゃらなカープが見たい|カープ道リレーコラム第19回

ライター/辻健治(朝日新聞社)

 

逆転でのセ・リーグ制覇をめざす2位・カープは、9月8日から敵地で首位・阪神タイガースとの直接対決3連戦に挑んだ。

取材で訪れた阪神甲子園球場は、高揚感に包まれていた。球場を訪れた人の大半はもちろんタイガースファンで、スタンドはチームカラーの黄色で埋め尽くされていた。レフトスタンドの上段付近をカープファンが真っ赤に染めていた。

 

私はこの夏、高校野球の取材で甲子園に約2週間通い続けた。

同じ満員のスタンドでも、雰囲気は大きく異なるものだった。2005年以来18年ぶりのリーグ優勝を祈るタイガースファンの熱気が充満していた。

独走するタイガースと、わずかな可能性を信じて追いかけるカープ。ともにこの3連戦は先発投手の三本柱をそろえて臨んだ。

加えてカープは、外野陣で戦列を離れていた秋山翔吾選手と西川龍馬選手がスタメンに復帰。期待と不安が入り交じる大一番に臨んだ。

 

室内練習場で新井貴浩監督(25)と話す秋山翔吾選手、西川龍馬選手=2023年9月8日、阪神甲子園球場、辻健治撮影

 

しかし、結果はカープの完敗に終わった。

投手陣は床田寛樹、森下暢仁両投手がともに先制を許し、五回でマウンドを降りた。3戦目に先発した九里亜蓮投手も粘りの投球を見せたものの、味方の守備の乱れも絡んで八回途中5失点に終わった。

打線は3試合いずれも1点どまり。秋山選手と西川選手は出場2試合でともに無安打と結果を残せなかった。

 

まさかまさかの3連敗。直接対決の前までは「12」だったタイガースの優勝へのマジックが、一気に「5」まで減った。カープは逆転優勝が極めて厳しい状況に追い込まれた。

また、3連敗したことにより、今シーズンのタイガース戦でのカード負け越しが決まった。2020年以来3年ぶりだ。

 

■タイガースとの「差」は?

試合後の囲み取材で、私は新井貴浩監督に質問した。「埋めなくてはいけないタイガースとの差は何ですか?」

新井監督は「ちょっとの差だと思うし、でもそこのちょっとが大きいと思うし。自分たちはいつも言っているように、戦いながら強くなっていかないといけない」と答えた。

そして続けた。「タイガースは成熟されているなと思う。自分たちはまだまだ試合を重ねていって、戦っていく中で、どんどんうまくなる、強くなる、これからのチームだと思っているので」

カープが新しい体制になって最初のシーズンは、まだ終わっていない。「これからのチーム」なのだ。

 

甲子園で3連敗した翌日の11日、西川選手と菊池涼介選手が出場選手登録を外れた。ともに負傷した影響が残っており、ポストシーズンを視野に入れた療養に入る。

「キクにしても龍馬にしても『大丈夫です、いけます』と言ってくれるし、その気持ちはすごくうれしいですけど、まだ戦いは続くので。『頑張ってくれる気持ちはうれしい。ただ大切な試合でお前たちがいないというのは痛い。まずはしっかり治してくれ、気持ちはもらっておく』と彼らには伝えました」と新井監督は説明した。

クライマックスシリーズ(CS)進出をかけて、Aクラス争いは油断できない。満身創痍での戦いとなるが、意気消沈している場合ではない。

 

今年7月、カープが10連勝した後、秋山選手に聞いたことを思い出す。チームがうまくいかなくなった時にこそ、必要になるのはどんなことなのかを尋ねると「やっぱり元気な人が多いといいですね」と言った。

秋山選手はさらに「落ち込みたいですよ、僕だって。顔を上げていられないような(試合の)内容の日だってあるから。でも、やっている以上はなるべくそれを見せないで、次に向けて取り組んでいくということの繰り返しなので。空元気がうっとうしいっていうのも出てくると思う。でも、1歩2歩引くよりもやりきった方がいい」と話した。

 

ペナントレースもいよいよ大詰め。カープはCSへの切符をつかみ、そして日本一をめざす戦いを続けられるか。

空元気でもいい、がむしゃらに最後まで諦めない姿が見たい。「ちょっとの差」を埋めるチャンスはまだ残されている。

 

CarpCarpCarp
広島ホームテレビで毎週水曜深夜に放送されている「カープ道」。カープを知らない、興味ない、乗っかりたい人必見のカープ学習番組です。CarpCarpCarpでは、毎週木曜日に番組出演者によるリレーコラムを掲載中です。

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