初のCS出場で代打ホームラン。プロ2年目で何を掴んだか末包さん。昨季2人の先輩から貰った言葉

末包昇大。今年度々耳にした名前だろう。

社会人野球大阪ガスからドラフト6位でカープに入団、プロ2年目となる今シーズンは初の二桁本塁打となる11本のホームランをマークした。未来の和製大砲として更なる進化が楽しみな存在だ。

以前話を聞いた時には「一喜一憂しない」と言っていた。

常に平常心で謙虚を保つ。状況の変化のたびに心が揺れ動いていては冷静な判断ができなくなり、パフォーマンスにも波ができてしまう。

日中はずっと野球のことを考えながら過ごしている。その為、家に帰ってから食事をとったあとにおよそ1時間ほどぼーっとする時間を作っているそうだ。

YouTubeを見たり、漫画を読んだりと野球に全く関係ない時間を過ごすようにしている。

漫画は色々と探して気になったものを読んでおり、「ワンピース」では毎エピソードで泣く、ある意味“涙活”にもなっている。

特に“空島編で黄金郷を見つけて、主人公のルフィが鐘を鳴らした回”ではブワーッと泣いたらしい。そもそもワンピースを読んだことがない、ストーリーを知らないという方はすみません。ちなみに私も同じところで泣いた。

 

プロ2年目、初めてのクライマックスシリーズという大舞台

今シーズンの終盤あたり、新井監督は何度も「末包さん」と名前を挙げた。インタビューでは何度か「彼は何か掴んだと言っていましたよ」と期待がたっぷりと乗ったイジリを耳にした。

新井監督はCSに向けても「あえて名前を挙げさせていただくと末包選手ですね。彼は『つかんだ』と言っていましたのでCSでも期待したい」とキーマンに指名した。

横浜DeNAベイスターズと戦ったクライマックスシリーズ・ファーストステージの初戦は、今季16勝を挙げセ・リーグ最多勝投手となったDeNA東克樹投手が相手となった。

チームは延長の末、サヨナラ勝ちという劇的な勝利を掴み取ったが、末包はこの日3打数ノーヒット、一打サヨナラのチャンスで回ってきた4打席目には代打を送られた。

打てなかった悔しさは翌日の試合でたった一度の打席で晴らせた。今季セ・リーグの最多奪三振のタイトルを手にしたDeNA今永昇太投手から代打でホームランを放った。

「めちゃくちゃ手応えがありました」

大舞台で打ったホームランはさぞかし気持ち良かっただろう。新井監督は叫び喜び、ベンチの盛り上がりも凄かった。

チームは残念ながらCSファイナルステージで敗退となったが、来シーズン、末包さんに大ブレイクをしてもらう為に、これからも新井監督との撃ち合いを楽しみにしている。

 

■1年目、ファームで過ごした経験は財産に

ルーキーイヤーはいきなりの開幕スタメン。4打数3安打の猛打賞で期待に応え、全国のカープファンにその名を覚えてもらった。

しかし、一軍生活は長くは続かず、プロでぶつかった壁は大きかった。必死にもがき続けていたらあっという間に1年が終わっていたと言う。

 

技術面のことはもちろん、できる限りの努力は色々と試した。プロに入って最初の頃は自分の打席が終わったらすぐに対戦した相手投手との配球などをベンチに戻りメモ書きをしていた。

これはテレビでプロ野球を観戦しているときにはよく見かけるシーンかもしれない。勉強熱心だし、ノートぎっしりにデータを書く選手も多くいる。

しかし、その姿を見た先輩の田中広輔からは違う視点でアドバイスをもらった。

「メモも大事なことかもしれないけど、自分の打席のときにチームメイトはみんなで声を出して応援してくれていただろう?だったら自分も他の選手の打席のときはちゃんと応援してあげないと」と。

この頃はファームにいた時期だった。

 

なんとかまた一軍に上がらないとと毎日自分と戦っていた。同じくファームで声を出しながら必死に頑張っていた尊敬する先輩からの助言だったから心に響いた。

そしてもう1人、大好きな先輩から言ってもらった言葉が末包を支えてくれていた。

昨シーズン、ファームで悩んでいた時期によく可愛がってくれていた長野久義だ。「ここから何か掴めば今からでも現役で500本ホームラン打てるよ。素質はあるよ」と言ってもらえた。

「プロで何年もやってる方からそうやって言ってもらえたのは凄く嬉しいですし、実現するために頑張らないといけない」

 

憧れのプロ野球選手になれてからのこの2年間、今までに経験したことのないスピードで様々な喜怒哀楽が通り過ぎていった。

子供の頃から大きなホームランを打てる選手がヒーローに見えていた。打ったときの大歓声は打った本人にしか味わえない。ダイヤモンドを一周している瞬間はどれほど気持ちの良い時間なのだろうか。

 

今季飛躍を見せてくれた末包昇大。来シーズンは今年以上にあの快感を味わうことができることだろう。

だって新井監督が「30本くらいは打てるって、彼が言っていた」と期待しているんだから。

 

取材・ライター/ゴッホ向井

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