小林樹斗が復活に向けて歩む道。一軍で投げる姿を家族に見てもらうために、ここから這い上がる
2020年ドラフト4位で指名を受け、智弁和歌山高校からカープに入団した小林樹斗。
1年目から一軍のマウンドに立ち、未来のエース候補として注目を集めた。
入団1年目の小林樹斗投手
しかし期待された2年目は、一軍での登板は中継ぎでの1試合、さらには夏場を前に右肘の疲労骨折と診断され、手術を受けることに。
リハビリからグラウンドに戻ってきたのは3年目の昨シーズン、4月1日にウエスタン・リーグで実戦復帰を果たし、復調の兆しを見せた。
「不安なく腕を振れた」と、その後も復活へ向けて、ファームで全16試合に登板した。
評価も高く、2024年こそはと期待も高まっていたが、日南秋季キャンプで同じ個所を痛めてしまい再手術となり、プロ4年目のシーズンは再びリハビリから始まった。
■ 少しずつだが、回復へと向かっている
「キャッチボールも始めていて、今は塁間くらいの距離を6割ぐらいの力で投げられているので順調に進めていると思います」。
3月中旬頃に話を聞けたときには、痛みや違和感も投げている中では全くなく、順調にきていると話してくれた。
ただ、まだリハビリ段階の中で骨がくっ付いていく最中なので、痛みがないからといってテンポを上げすぎないよう、畝龍実三軍統括コーチと相談しながら、投球フォームや体作りの見直しなどを進めている。
他にも同じリハビリ組には右脇腹を痛めた日高暖己投手もいた。昨年まで所属していたオリックス・バファローズではどういうトレーニングを積んでいたのか、投手陣はどんな練習をしていたのかなどを質問しているという。
「日高自身もしっかりとこだわりを持ってオリ時代の先輩・山本由伸投手(ドジャース)のところで練習参加をしてたりするので、後輩にはなりますが聞くことで自分にプラスになることも沢山あると思い、年齢関係なく気になったことを聞いています」。
再びマウンドへ成長して戻れるように、周りから吸収できることには貪欲に動いている。
■ 一軍で投げる姿を家族に見せるために
日々のトレーニングのモチベーションは、とにかく“上で野球をやりたい”である。
そして刺激をもらえるのは、今年のオフに共に自主トレで汗を流したチームメイトの存在だ。
先輩の大瀬良大地に入門する形で、他にも大道温貴、斉藤優汰と一緒に行った合同自主トレは“大瀬良塾”と呼ばれた。
「大地さんはトレーニングひとつにしても動きを大切にしていました。一緒に練習をしたり、話をする中でも、すごくプラスになることが多かったです。そして野球人としても人としても素晴らしいなと思いますし、周りからの信頼も厚く、そういった面でも学ぶ部分が色々ありました」。
この“大瀬良塾”のメンバー4人はLINEグループを作っており、投げている感覚の事や、その日のトレーニングメニューなどを伝えたりと毎日連絡を取り合っているらしい。
現在の小林樹斗投手
小林と同じく右肘の怪我から手術経験もある大瀬良からは「とにかく飛ばしすぎないように」と常に声をかけてもらう。
「今年の春のキャンプも自分以外の3人は上にいましたし、4人で上でやりたいなと思う部分と、同じ投手として負けたくないという思いを持ちながら焦らずに頑張っています」。
そして小林は、父親との連絡のやり取りも大切にしている。
「病院に行って肘の経過を見たときや、キャッチボールを再開し始めたときなど、節目節目で連絡をしています。きっと僕から連絡をしないと状況もわからず心配だと思うので、伝えるようにしています」と話してくれた。
そんな父には「やっぱり上で投げてるところを見せたい」と話す小林だが、辛いリハビリ期間など、野球から離れている時間が長いと、野球の“あの雰囲気”を忘れてしまいそうになるという。
そんなとき、ふとした瞬間に頭に浮かぶのが、高校時代にグローブに刺繍で入れていた『克己心』という言葉だそうだ。
苦しい今だからこそ“己に勝つ心”を強く抱き、完全復活をイメージしながら、ここから這い上がる。
小林樹斗は必ず強くなってマウンドに帰ってくる。
ライター・ゴッホ向井