大盛穂の打撃改革~近藤健介からの学びを大切に。先輩たちを超えるために~

「もうやるしかないんで」

話をしていると度々この言葉がでてきた。

今季がプロ入り5年目になる大盛穂。静岡産業大学から育成契約でカープに入団し、1年目の終わりで支配下登録を勝ち取った。積極性が魅力で、足が速く守備力の高さも定評があり、1軍に顔を出す機会は増えていった。

しかし、昨季を振り返ると、1軍では59試合に出場し、守備では光る部分を見せたが、課題は打撃面で打率は1割5分2厘、特に71打席で22三振と空振りが目立つ内容だった。

“もうやるしかない”、そう気持ちを引き締めて、大盛穂の2024年は始まった。

 

 

■ 「打席ではプラス思考に」ホークス近藤からのアドバイスを受けて

 

1月、今年は鹿児島県徳之島にて近藤健介選手(ソフトバンク)が今季からオリックスバファローズに移籍した西川龍馬選手らと一緒に行なった合同自主トレに大盛も参加させてもらった。お目当ては打撃力向上へのキッカケだ。そのために近藤健介から何かを学んで持ち帰りたかった。近藤はソフトバンクに移籍した2023年は本塁打王、打点王に加えて最高出塁率のタイトルも獲得。選んだ四球は109個と両リーグトップの数字を残している。

今までの経験についてや野球に対しての姿勢など、練習中から食事の際にも聞きたいことはすべて質問した。

「僕は三振が多いんですが、近藤さんはどんな事を考えながら打席に入ってたりとか、四球を取ってるんですか?」と聞くと、

「そんな四球を取ろうとか、三振したくないとか考えない。このシチュエーションだったら何が最適なのかを自分の中で考えて、こうなれば良いなと思って打席に入ってる。少しでもマイナスなイメージがよぎったら終わりだよ」と言われた。

打席の中ではプラス思考に。もちろん技術があっての話ということはわかっている。ただ近藤から言われた「考え方ひとつで結果は変わるよ」というアドバイスは今の自分に必要なモノだとすぐに感じた。

球界を代表する選手でも自信を持ってやれるように“打席では絶対にマイナスな事は考えたくないし、考えないようにしている”。

 

「近藤さんの野球に取り組む姿勢は、ランニング1つでも、ウエイト1つでも一切手を抜かない。自分をどこまで追い込めるのかってところを追求されてるし、本当にストイックな方です。そういう姿を見て一流だなと感じます。息抜きも大事とは言われましたが、やるときはとことんやらないといけないなと思いました」

 

そんな選手から言われた言葉だからスッと脳に入ってくるのだろう。成長した姿を見せたい。その為にはもちろん1軍にいないといけない。

 

「1軍に上がって会いたいですし、会ったらご飯行こうと言ってもらいました。意地でも開幕前に上がれるようにと思って頑張っています」

 

 

■ 打撃力向上で外野手レギュラーへ

 

この合同自主トレでは野球スキルコーチの菊池タクトさんも参加し、ティーバッティングのドリルなどを教えてもらったそうだ。

そもそもティー打撃ドリルとはなんぞやと聞いたところ、

左手の片手スイングや右手の片手スイング、足をクロスさせて打つなど、バッティングの動作を1つ1つ分けて行なう練習法で、それが10何種類あるとしたら、全ての動作がくっついたときに1つのバッティングの形になるというイメージらしい。

 

「何種類か教えていただいたので、試合前に5、6種類を考えて選んで自然に振れるように春季キャンプもずっと取り組んできました。もちろん結果は絶対に付いてこないといけないんですけど、自分はそれを信じて頑張っています」

 

撮影してもらったバッティング動画などを自宅やホテルで見直し、今の自分は何をするべきなのかを考えて過ごしている。今年一年やり通そうと心に決めた。

 

 

そして、この合同自主トレで一緒だった西川龍馬からは「俺の穴埋めろ」と尻を叩いてもらったという。大好きな先輩から頼むよと言われるのはもちろん嬉しいが、悔しさも湧いてきた。

 

「僕が不甲斐ないというか、同じチームにいたときにもうちょっと一緒にグラウンドでやれたらよかったなって思います。違うチームになりますが、同じ土俵で闘えるように頑張ります」

 

1軍の外野手レギュラー奪取へ。外野という3つのポジションに一体誰が座るのか?まだまだわからない。ケガを治し上がってきた秋山翔吾を筆頭に、野間峻祥、中村健人。さらには田村俊介、中村貴浩、久保修と若手の台頭も激しく熾烈な争いになるだろう。

 

「数字で見せないと上がるチャンスはないと思うので、打ちまくって、守備走塁もしっかりとやれることを精一杯やって、良いアピールをします。もう、ほんとにやるしかないんで」

 

今年こそ競争を勝ち取る。必死に重ねてきた努力が実る1年だと、自分を信じて。

 

ライター・ゴッホ向井

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