『来季外野手のレギュラー争いに名乗りを上げる。中村貴浩「トークの方も成長しました」』
以前このカープカープカープでもコラムを書かせていただいた“中村貴浩”選手。
初めて喋ったのが4月初旬頃で、ちゃんと喋る機会は5ヶ月ぶりぐらいだろうか、早速こんな話から聞いてみた。
ーゴッホ「カープに入団してすぐの時期に、由宇練習場でお話を聞かせてもらったんですが、そのときに『野球以外で嬉しかったことはなんですか?』って質問をしたら、中村選手が答えるまでに2分10秒かかったんです(笑)」
ー中村貴浩「(笑)・・・そんなにかかってましたか?あれよりはトークの方も成長したと思います(笑)」
ぜひあれからの成長を、以前書いたコラムと併せて楽しんでほしい。
■鮮烈なデビュー
今季がルーキーイヤー。3月24日に行われた由宇球場でのファーム地元開幕戦では5打数5安打3打点と大活躍。その名を一気に広めた。その後5月17日に支配下を勝ち取り、新しい背番号は97に決まった。順風満帆のスタートを切れて一軍の舞台へ。
「一軍はお客さんが多くて、その中で野球をできることが1番嬉しいなと感じました」
ビジターでも沢山のカープファンが入ることに驚いた。そして声援が力に変わるというのを実感したという。
嬉しいプロ初ヒットは10打席目で生まれた。両親に「あげる〜」とプレゼントした記念球。「いいの〜?」と喜んで受け取ってくれたそうだ。そしてもう一言「怪我しないように頑張ってね」と返ってきた。
そもそも野球を始めたきっかけは父と兄が遊びでキャッチボールをしていたところに弟・貴浩が混ざり、それが楽しくて小学1年生のときに地元のチームに入った。2つ上の兄もほぼ同時期に野球を始め、一緒にプレーをした。エラーをしたときに「ちゃんと取れよ」って怒られて、言われた貴浩が言い返せずにただただはぶてていたのが記憶に残ってるらしい。男兄弟で2つ上に兄がいるのは私も同じ境遇で、“何か反抗したらやられる”というあるあるには超共感できた。今では「応援してるよ」と兄も弟の活躍を楽しみにしている。
■プロで味わった壁を少しずつ壊していく
「最初がうまくいきすぎた。二軍で打てて支配下になれたのに、一軍ではなかなか打てなかったってことと、抹消されてからその後二軍でもなかなか打てない試合が続いたことがすごく悔しかったです」
6月5日、登録抹消。一軍での成績は11試合で26打数3安打、打率は1割1分5厘だった。ファームへの移動が決まる少し前に新井貴浩監督と藤井ヘッドコーチから「振れることは魅力だから、それは変えないように」と声をかけてもらった。ファームでは少し冷静になり、自分が感じた大振りになっていた部分を少し変えたが、強く打つという意識だけは忘れずに取り組んだ。そして、気になったものはできるだけ試してみた。スパイクで悩んでいた時期にはミズノの方から「これはどう?」と西川龍馬選手と同じモデルのものを渡された。ハイカットのものは初めてで、試しに履いてみたら足首が固定される感じがしっくりきた。
他にも矢野雅哉が菊池涼介のバットを使っているのを見て、「ちょっと借りていいですか?」と使ってみたらすごく振りやすかった。「すぐにスカウトでお世話になった末永さんに『菊池さんのバットが欲しいんですが…』と相談したら本人に話を伝えてくれて、後日菊さんからすごい量のバットが届きました」だが、このバットを使い始めて驚いた。
「一年間試合に出続けるというのが初めてのことだったので、長くて重さがある菊さんのバットは途中振れなくなってきたなと感じました。これを一年間振り続ける菊さんは本当に凄いなと驚きました」
今では西川龍馬モデルのバットを使い、練習のときには菊池涼介モデルのバットを使っているそうだ。
とにかく必死にやってきた努力が実り始めたのは夏が過ぎた頃だ。9月16日に行われた由宇での阪神戦では自身初の1試合2本塁打を放った。その翌日の9月17日、再び中村貴浩は一軍へ昇格。その日の出場は無かったが、翌日9月18日の中日戦では8番ライトでスタメン出場し、5打数2安打1打点と早速期待に応えることができた。
「まだまだなのでこれからも変わらずチームの為にやれることを頑張っていかないといけない」。そう話す中村貴浩の目を見て、この数ヶ月間での彼の色んな部分での成長をすごく感じた。
2023シーズンが終わり、オフには西川龍馬のオリックスへの移籍が決まったが、これをチャンスと捉えて欲しい。来季は一軍で大暴れし、外野手のレギュラーを必ず自分が奪ってやるという気持ちを強く持っていることだろう。彼の打席での構えを見るとワクワクする。見ていて引き込まれるような雰囲気を漂わせている。
“強く振る”その魅力的なスイングで来季は一軍でプロ初ホームランを放ち、しゃ!とガッツポーズを見せて欲しい。
ライター ゴッホ向井