久保修が感じた手応え。新井監督から言われた激励の言葉。そして成長して再び一軍へ

自身初の開幕一軍を掴み取った2022年ドラフト7位入団の久保修。

 

 

ルーキーイヤーの昨季は怪我からの悔しいスタートだった。チームに合流してからは一軍に上がるために“打撃向上”をテーマに試行錯誤を繰り返してやってきた。一軍出場こそは無かったが、この1年間やってきたことに少しだけ手応えを感じた。

そして2年目の今季は初の春季キャンプ一軍スタートから勢いがあった。
オープン戦でも守備力の高さや、鍛えてきた打撃で良いアピールができ、外野手のレギュラー争いにも名乗りを上げた。

しかし、開幕してからの雰囲気は違うものだった。
「シーズン始まってからは相手投手のこれまでとは全く違う配球になかなか結果が出せず、ファームに落ちるまで何も出来なかったな、というのが正直な気持ちです」。

何万人ものお客さんの前でプレーをするというのは、今までの野球人生では味わったことのない経験だろう。
大勢のファンからの声援は、力に変わる時もあれば、プレッシャーに感じる瞬間もある。

「カープの応援が凄いというのは知ってはいたんですが、実際にグラウンドで味わってみると想像以上のものでした。慣れるまでは緊張しましたが、声援に後押しされて自分の実力以上のものを出させてくれるってこういうことだなと感じました」

プロ初ヒットを打った日には両親や姉からも「おめでとう、これからも頑張って」と連絡が届いた。応援してくれている家族のためにも再びあの舞台にもどりたい。

■ 恩師からの一言

プロに入って初めてとなるオフはヤクルトスワローズ山田哲人選手の自主トレに参加させてもらった。

「皆さん初めましてだったので最初は緊張しましたが、間近で山田哲人さんや川端慎吾さんといったプロの世界で実績を残している方達の練習を見られて、色々な発見や吸収がありましたし、気になったことは聞いて教えていただいたりと凄く充実していました」。

打撃面ではタイミングの取り方であったり、軸足の溜めなど、これまでの経験を惜しみなく教えてくれた。
そして嬉しい言葉も人伝てに耳に入ってきたという。

「直接本人から聞いたわけじゃないんですけど、スタッフの方から哲さん(山田哲人)が『化けるかもしれないね』と言ってくれてたみたいで、それを聞いたときは本当に嬉しかったです」。

そもそも、なぜ面識の無かった山田哲人選手らの自主トレに参加するようになったのかというと、大阪観光大学時代の恩師からの一言がキッカケだったらしい。

「大学時代にお世話になった伊勢さん(元ヤクルトスワローズ・伊勢孝夫さん)から突然『お前哲人のところ行ってこい』と言われました。めちゃくちゃ嬉しかったです」。

恩師からの言葉に二つ返事で「ぜひ行かせてください」と伝えたところ、わざわざお願いをしてくれて、繋げてもらえた。

久保修の歩む野球道には伊勢さんの存在がある。
大学時代に「野球をやめたいです」と伊勢さんに伝えたことがあったが「お前にはプロにいけるチャンスがある」と反対された。

「伊勢さんがいなかったら今の僕はいないです。活躍した姿を見せられるように頑張らないといけません」。

■ 数年後はカープの中心選手に

開幕してからはイメージしている形と身体のズレを感じ、なかなかフォームを作れずにいた。

一軍では気づいたらツーストライクに追い込まれていた。その感覚が今も残っているという。
ファームに落ちてからは再び一軍に戻ったときのために、1打席1打席の内容をより良くしていくことを意識している。

 

 

「一軍に上がったら甘い球がほとんどないので、今できることは、どの球に仕掛けるとか、追い込まれてもとにかく粘って四球を取ったりとか、次に繋がるような打席にしたいです」

そして、自主トレのときに撮ってもらっていた山田哲人選手と会話をしながらフォームをチェックしている自分の動画を繰り返し毎日観ている。再びイメージの形と身体がマッチできるように。

新井貴浩監督からはファームに落ちる前に声をかけてもらった。
「守備の面では何度もチームを救ってくれるようなプレーをしてくれた。お前はこれからの選手だし、スタメンでレギュラーとして試合に出られるポテンシャルはあるんだから頑張ってこい」。

新井監督が求める久保の姿は、レギュラーとして“数年後のカープ”を引っ張ってくれるような選手に成長してもらうことだった。

「あの場所に戻りたいです」。
一軍の話を聞くと、ふとこの言葉をもらす。
とにかく今はがむしゃらに打撃を磨き続け、一軍にいつ呼ばれてもいいように準備をしている。またあの大声援の中心へ。

 

ライター・ゴッホ向井

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