「いい時より悪い時にどうするか」見習いたい床田寛樹のポジティブさ|カープ道リレーコラム第9回

ライター/辻健治(朝日新聞社)

カープのサウスポー、床田寛樹投手(28)と話していると、そのポジティブさを見習わなければと思わされる。

 

 

150キロの速球は「封印」

今シーズン、投球スタイルを変えた。変えざるを得なくなったとも言える。

従来は150キロ台のストレートを軸にして、変化球との緩急で勝負をしてきた。しかし、今年5月に左ひじの炎症のため出場選手登録から外れた。入団1年目で「トミー・ジョン手術」を受けた経験もあり、ひじの状態を考慮しながらマウンドへ立つ必要に迫られた。

「スピードを出そうと思えば出せるけど、後々のことを考えている」と床田投手。持ち味を生かせなくても、前向きに切り替えた。

1軍に再合流してからは、ストレートが140キロ台半ばと抑え気味だ。投球数をなるべく少なくするため、ツーシームやスライダーなどの変化球をコントロール良く投げ込むことで、打たせて取る投球を心がけている。

今シーズンは9イニング平均で奪三振が5個未満と決して多くはない。それでも防御率は1点台と安定感を保っている(ともに7月5日現在)。

「元々あまり三振はいらないというか、欲しい時に取れればいいやと思うくらいだった。ストライク先行で早く打たせようというのが、はまっているのかなと思います」

また、他にも昨シーズンまでとは異なる状況がある。

今季からは「本職」に専念した同期入団の坂倉将吾捕手とバッテリーを組むことが増えた。

「會澤(翼)さんとはリードが違う。サインに『ここでこう行くんや?』と思うことはあります」と本音を口にしつつも、「でも僕が裏をかかれているなら、バッターも同じこと。幅が広がったと思います」。4学年下の後輩を信じて腕を振る。

多少の不安を抱えながらも今の自分にできることを見極め、やりくりしていくピッチングになった。

「いい時よりも悪い時にどうするか、だと思う。考えながら投げられているというのは、自分にはすごくプラスだなと。ひじが万全になって、また150キロの球を投げられるようになった時に今の考え方ができれば、余裕を持って投げられる。もう一段上、二段上のレベルになるんじゃないかな」

 

目標は未到の記録

昨シーズンは7月までに自己最多の8勝を挙げ、「左のエース」と呼ぶにふさわしい働きぶりだった。

だが8月の試合中、内野ゴロを放って一塁へ走り出した際に転倒。右足関節骨折で離脱を余儀なくされ、そのまま6年目のシーズンが幕を閉じた。「先のことばかり見ちゃっていた。足元を見つめていなかった」

先発ローテーションから背番号28が欠けた影響は大きく、チームもシーズン終盤にかけて失速していった。

けがから再起した床田投手が、目標として繰り返し掲げるのは自身がまだ達成していない記録だ。

「これまでシーズンを通して働いたことがない。2桁勝利と規定(投球回)に乗せたい」

今年はプライベートでも大きな変化があった。6月に第1子が誕生。心境に変わりがあったか尋ねてみると、「(現役生活を)長くやりたいなと思うようになりました。子どもの記憶に残るくらいまで、細く長くやりたい」。

こちらがドキッとさせられる言葉もあった。「もし、また手術するとかってなったら、もう辞めようと思っていた。そこまでして野球やりたくないなと。でも、結婚して子どもも生まれて、プラスに考えられるようになったと思います」

今シーズンも折り返しを過ぎた。床田投手は7月4日の阪神タイガース戦(マツダスタジアム)で先発し、7イニングを投げて無四死球の1失点。チームトップとなる7勝目を挙げた。

今シーズンのカープは、これまで苦手としてきた交流戦を勝率5割で乗り切り、上位争いを続けている。床田投手が夏場をいかに踏ん張れるか。真価を問われるのはここからだ。

 

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広島ホームテレビで毎週水曜深夜に放送されている「カープ道」。カープを知らない、興味ない、乗っかりたい人必見のカープ学習番組です。CarpCarpCarpでは、毎週木曜日に番組出演者によるリレーコラムを掲載中です。

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