絶対に一軍に。主役は自分だ。高橋昂也のストーリー

取材・ライター/ゴッホ向井ブルー

 

野球漫画やアニメを観て、プロ野球選手を夢見る少年たちが沢山いる。

私もそのひとりだった。「MAJOR(メジャー)」という野球漫画にどハマりし、プロ野球選手に憧れた。将来はカープに入りたかった。

しかし、中学受験で唯一受かった学校にまさかの野球部が無く、ハンドボール部に入ったところでその夢はフィニッシュした。

 

今でも「メジャー」は大好きで漫画もアニメもたまに見返すのだが、その度に、あるカープ選手を思い出す。未来の左エースとして毎年大きく期待をされている高橋昂也投手だ。

 

 

高橋昂也は作中に出てくる主人公のライバル投手「眉村健」に憧れてプロ野球選手になりたいという夢ができた。

登場するときの厳かなオーラと剛腕っぷりは野球少年なら誰もが一度は憧れを抱くだろう。右の本格派でカープのエースだった黒田博樹さんのようなカッコ良さがあった。(ちなみに黒田さんをモデルとして描かれた選手は日本代表編で黒場投手として登場する)

眉村は「バントがどうした!?嫌ならさせるな!!」という名言も残している。かっこよすぎる、私も言ってみたかった。ちなみにこの名言に対して高橋昂也は「カッコいいですが現実的には厳しい」と言っていた。

そもそもメジャーという作品は、主人公・吾郎の幼稚園時代から話は始まり、プロ野球選手だった大好きな父親(おとさん)に憧れて、野球と共に成長していく物語である。

特に好きなアニメで、人生で20周は観たという。同じ野球人の成長する姿を見て、そのたびに「よし、やるぞ」と自分の気持ちも奮い立つそうだ。

そんな作品の中で高橋昂也が特に好きだという言葉がある。

高校時代、野球部のコーチからキツいトレーニングを指示されて、脱落しそうになっていた同級生に向けて主人公の茂野吾郎が言い放った言葉だ。

「オレは教官(指導者)にトレーニングさせられてんじゃねぇ。オレはオレのためにトレーニングしてんだ。」という台詞である。

 

この台詞が毎日野球を頑張っていた学生時代の高橋昂也の心に響いた。

「自分はコーチや誰かのために練習しているわけじゃない。自分のために練習をしているんだから人目を気にしてやる必要はないんだ」という思考になれた。

 

信頼できるコーチと共に

手術も乗り越えて2021年には5勝を挙げたが、昨季は一軍出場がなかった。今季は再び一軍に上がるためにファームで調整を重ねている。

練習風景を眺めていると畝龍実コーチと会話をする姿をよく目にした。そこで畝コーチについて高橋昂也目線の話を聞いてみた。

 

――畝さんってどんなコーチ?

「畝さんは、コーチと選手という立場ですけど、自分の意見とかは馬鹿にせず聞いてくれる人です。野球の話はもちろんですが、世間話とか普通にします(笑)」

――今一緒に取り組んでいる課題は?

「練習でこれやれって言われることはないです。一方的にじゃなく、これやりたいって言ったら一緒にやってくれますし、自分の言ったことを理解しようとしてくれて『それだったらこういう風にしたら良いんじゃないか?』って言ってくれるんで、課題みたいなやらされてる感じは無いですね」

――最近の状態はなんて言われる?

「『良くなってきてるな、良い感じ』と言ってもらいます」

――畝さんからかけてもらう言葉と、自分の中の感覚はかなり納得に近い?

「そうですね。怪我をして、手術してから周りは良いって言うけど自分の中では納得いかないっていう感覚がここ3、4年くらいずっと続いていたので、そこでイマイチ自信を持てずにやっていました。やっと自分でも納得がいくし、周りももっと良くなったねって言ってくれているので、理想に近づいてきた感じがします」

ここ3、4年壁に当たっていたという言葉には驚いた。やっと今は理想の形に向けて進むことができているという。

 

黒田と大野で過ごした時間

畝コーチにも高橋昂也について話を聞かせてもらった。

――今年の入りから6月後半にかけての高橋昂也の変化は?

畝コーチ「矯正組に入ってきたときに1番最初に『話し合いながら焦らずやっていこうや』と伝えて始まったかな。最初は力が入らないって言っていたから、下半身から意識させてやってきたんだけど、黒田(黒田博樹球団アドバイザー)が大野に来てくれて、昂也に下半身の軸足の動きを教えてくれたんだよね。そこから見ていて少しずつ自分でも感覚と手応えを感じているように見えるよ」

――選手と結構話し合いながらトレーニングされますよね?

畝コーチ「そうだね。こっちの言い分ばかりを伝えて、納得してない事をやらせていてもダメじゃし、話し合いながら1番良い形をやっていこうって決めてる。型にはめるんじゃなくて自分の良さをだすっていうところを目標にやってる感じかな」

――選手たちにはどんな言葉をかけていますか?

畝コーチ「今やっていることを信じて、自分が良いと思ったことを突き進んでやりなさいと、いちいちあれこれあれこれって変えててもダメだから、まずやってみる。失敗したらまた次のことをやればいいし、上積みもされるはずだよって声をかけてるね」

選手に対して決して一方通行にならない。そして壁に当たっている選手たちが前向きになれるような時間を作っているのだろう。

そんな畝さんも野球漫画を結構読んできたらしい。「ダイヤのA」「メジャー」「キャプテン」「緑山高校」と色々と読んできたそうだ。

漫画で好きなシーンや好きな台詞を聞いてみると、「ダイヤのAの片岡監督が選手たちの闘志を掻き立てるような台詞をいっぱい言うよね。あれ?これ使えるんじゃないか?って思うぐらいえぇ言葉をよく使うよね(笑)」と漫画の話にも付き合ってくれた。

そして最後に畝さんは「もしよかったら黒田が大野に来てくれて昂也にアドバイスしてあげた話を書いてね。ほんとよくしてくれたから」と言って去っていった。どの言葉も人柄も素敵なコーチなのだ。

 

埼玉からカープのエースへ

高橋昂也には部屋に飾っている宝物がある。メジャーの作者である「満田拓也」さんからいただいたイラスト&サイン入り色紙だ。

 

色紙には主人公の茂野吾郎のイラストと満田さんから「カープに入ってくれて本当にうれしいです!」とメッセージが入っていた。実は満田さんは広島県福山市出身で大のカープファンなのだ。

そしてもう一枚には、大好きな眉村と高橋昂也の並びの姿を描いてプレゼントしてくれた。

 

 

メジャー大ファンの私もこの色紙を見たときは大興奮した。それと同時に「もしもハンドボール部に入らなかったら俺も・・」「いや、野球部のある中学校に進学してたら俺も・・・」という世界一無駄なもしもを考えてしまった。

こんな言い訳をしていたら茂野吾郎にこう言われるだろう。

「野球部が無いなら作ればいいじゃん」

完敗だ。1秒でも言い訳を考えた時点で本気でその夢は追えていなかったのかもしれない。

好きならとことん好きになれ。言い訳をする時間があるなら好きなことを一生懸命やろう。そして、後悔しない道へ。

最後に、高橋昂也に後半戦への意気込みを聞いた。

「絶対に一軍に上がりたいですね。はい。それしかないです」

短い言葉だったが、そこに全てが詰まっている。

LINE はてブ Pocket