“人としての成長なくして技術の成長なし” 遠藤淳志が歩んできた道

「開幕ローテに淳志が入ったことも刺激になってるし、俺も頑張るわ」。

今季の開幕前、遠藤淳志にカープのドラフト同期で同い年の山口翔(現・火の国サラマンダーズ所属)から届いたLINEだ。カープ時代から親友と呼べる仲だった二人はお互いの活躍が刺激になり、今もたまに連絡を取り合っている。「山口翔、独立リーグで153キロ」という記事を見つけたときには遠藤からすぐに連絡をした。

遠藤「ナイスピッチング、良い感じだね。」

山口「ありがとう!次もやったる!」

二人の居場所は変わったが、心は変わらず通じ合っている。

 

『人としての成長なくして技術の成長なし』

これは遠藤淳志の恩師・霞ヶ浦高校の高橋監督の教えだ。

「高校生活3年間ずっとこの言葉を言われてやってきました。先輩からは可愛がってもらえるような人間性を、後輩からは慕われるような存在でいられるよう心がけています。先輩からはたまに舐めてるって言われますが(笑)」

この「人間的成長なくして技術の成長なし」は、かつて名将・野村克也さんが必ず選手たちに伝えてきた教えでもある。『人生と仕事を切り離して考えることはできない。いくら技術を磨いても、考え方、取り組み方が変わらなければ進歩することもない。』プロの世界に入ってからは今まで以上にこの言葉を大切にし、今日まで歩んできた。そのおかげだろう、辛い時期には周りに仲間が寄ってきてくれた。

「同郷の先輩・アツさん(會澤翼)からは、なかなか結果が出てない時に「このまま終わるなよ」と声をかけてもらいました。「失敗したら何が悪かったのかと反省しなさい、何も考えずにただ野球をするのではなく、とにかく何か考えよう」と言っていただいたおかげで今野球に集中できてるのだと思います。」

 

■念願のプロ初勝利

「今までで1番嬉しかったことは、やっぱりプロ初勝利ですね」。

2019年8月21日のヤクルト戦。中継ぎで登板した遠藤に嬉しいプロ初勝利が付いてきた。

「初勝利のウイニングボールや、3年目で5勝したときのボールは全て実家に送りました。今は玄関入ってすぐ左側かな?ショーケースに入れて大切に飾ってくれてます。」

両親にとって息子が元気に試合で活躍する姿を見られることが、きっと一番の幸せだろう。母親からは今の遠藤の様子を気遣い「大変な世界だろうから、なかなか気を使って連絡ができないんだけど、頑張ってるかな?ってたまに連絡したくなるから嫌がらないでね(笑)」と連絡がきたそうだ。

「母からの連絡はもちろん嬉しいことなのに嫌がらないでねってきました(笑)、親はずっと心配してくれてますね。社会人まで野球をやっていた父親からは「走り込め」って連絡がきました(笑)」

 

1軍で勝つことの喜びは、毎試合その夜は興奮して寝られないぐらいだと遠藤は言う。ハラハラドキドキしながら心配そうに応援する両親はどうだろう?ゲームセットで安心して、ぐっすりと眠れているかもしれない。

■暢仁さんからは「まだー?」って連絡きます

先月、5月20日に行なわれたソフトバンクとのファームの試合で遠藤は投じた1球目でピッチャーライナーを受けて緊急降板した。担架で運ばれる姿を見たチームメイトからはすぐに心配の連絡が入ったらしい。

「龍馬さん(西川龍馬)からは「大丈夫か?大袈裟やろ(笑)」って電話が来ました(笑)。でもちゃんとそのあとに「上で投げる力はあるんだから早く戻ってこいよ」って。暢仁さん(森下暢仁)からは「いつ上がってくるの?休みすぎな」って連絡がきました。いや休んでないですよ!って(笑)。多分僕がいなくて寂しがっているんだと思います(笑)。もちろん早く上に上がって同じ空間で切磋琢磨したいです。」

やはり遠藤淳志という人間は先輩たちから可愛がられる人間性なのだろう。笑顔で話す遠藤の表情を見ながらそう思った。そこにたまたま近くを戸根千明投手が通りかかった。戸根の姿が目に入った遠藤は「そういえば戸根さんからは連絡来なかったです」とニヤニヤしながら言った。

これに対し戸根も「はぁ!?会ったときに膝大丈夫か?って聞いたやろ!(笑)」と反論。

ゴッホ「戸根先輩はどんな人?」

遠藤「戸根さんがカープに来てから投手陣の雰囲気も明るくなったし、笑顔が増えたかなって感じてます。良い存在です。(戸根先輩の顔をちらっと見る)」

戸根「思ってないやろ(笑)」

遠藤「思ってますよ!(笑)」

 

「先輩からはたまに舐めてるって言われます」と自分で言っていた遠藤だが、それも可愛げのひとつだろう。改めて、『人としての成長なくして技術の成長なし』という言葉を思い出した。

そして、次回は戸根千明についてコラムを書きたくなった(笑)

 

取材・ライター/ゴッホ向井ブルー

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