「いつかは背番号5を付けたい」ポスト西川龍馬と呼ばれる田村俊介が言われた「レギュラー獲れよ」
このオフ、西川龍馬が国内FA権を行使しオリックスバファローズへの移籍が決まった。チームにとってはもちろん大きなダメージだが、若手にとってはチャンスだ。
特に外野手の何人かがすでに“ポスト西川龍馬”と呼ばれ、各メディアで取り上げられている。そのうちの1人、田村俊介は今季の悔しさを来季にぶつけるつもりだ。
「最後は一軍で怪我をして終わっていったので本当に悔しいです」
9月17日のドラゴンズ戦、一軍に昇格してから6戦連続安打と好調だった田村だったが左手小指付近に投球を受け負傷交代、診断の結果は骨折だった。
「お父さんからは『なんで避けんのんや』って怒られました(笑)ちゃんと説明しても『そんなん知らんわ!あんなん振りに行くな』って言われました(笑)」
■1軍に僕の居場所がある
今シーズン、7月頃までは苦しい時期が続いた。1軍ではなかなかヒットも出ず、怪我もあった。
「初ヒットが出るまでの一軍での出場の仕方が代打だったので、なかなか試合の流れに自分が入っていけてなくて、ベンチで見てて準備をして一打席に賭けてって感じだったのでメンタル的な部分での合わせ方が難しかったです」
ファームで再調整となったあと8月頃から少しずつ調子を上げていき、良い状態で再び1軍に上がれた。
「モチベーションは開幕一軍にいさせてもらった事がすごくデカくて、自分でも頑張れば1軍に上がれるんだっていうのをやっと実感することができ、力になりました」
1軍という場所が先の未来の話ではなくて、今の自分でも力を十分に発揮できれば行ける場所なんだと思えるようになった。
「『やっと戻ってきたか』って、新井監督や藤井ヘッド、コーチの皆さんから言ってもらえたのが嬉しくて覚えています」
そして9月12日、田村はプロ入り後初のスタメンに座り、2打席目にヤクルトのサイスニードからプロ初ヒットを放った。
「自分の中ではスタメンでいけば打てると思っていたので、初めてスタメンで使ってもらったときには強気でいけました」
さらには春季キャンプのときに新井監督から言われた「空振りしてもいいから“前で打て”」というアドバイスが打席での手ごたえに繋がった。
「自分が思っている以上にヒットがたまたま出たりして驚きがありました。前で泳がされながらバットに絡んでヒットというのが多くて『あ、これなんだな』と感じました」
そして、田村が1軍に上がってから活躍していた頃、由宇練習場にいた私に福地コーチから「田村いいね〜!1軍で頑張ってるね!」と突然声をかけていただいた。
笑顔で話をする中で福地コーチは「ライトとレフトのポジションでは全然やり方が違うから田村はそれをいきなりでよく対応できていると思うよ」と褒めていた。
このことについて田村本人は「本格的に外野を始めたのがプロに入ってからなのでどっちが得意とかがなくて、どっちも下手くそなんですよ僕(笑)逆にやるだけだなって気持ちだけです。どっち守ってても必死にボール取るだけです(笑)」と笑いながら言っていた。
ただ周りの先輩たちからも「去年と比べたら全然落ち着いとるな」と声をかけられるようになった。
一年目のときは初めての外野でわからないことだらけでバタバタしていた、何かを考えることすら出来なかったという。
今年に入って自分なりに考えて守備をやってみようと決めてやった結果が良い感じになった。
■来年が勝負、そこばかりが頭にある
「今年、松山さん(松山竜平)の自主トレに行ってから新しい感覚になって、バッティングがちょっとずつ良くなり始めたんで、この一年ではまだまだマスターしきれてない分、もっともっと時間をかけてやりたくてまた松山さんにお願いしました」
カープの最年長選手である松山竜平が毎年故郷の鹿児島県で行う自主トレ。来年1月も田村は参加する予定で、他にも新しく持丸泰輝らが加わる。
「来年が勝負の年だと思ってるんで今年以上にレベルアップしないといけないし、何人かでやると誰かのペースに合わせてしまうこともあると思うので、そこは僕なりに自分のペースでやりたいと思っています。あと久しぶりに松山さんのお父さんに会えるのも楽しみです(笑)」
“来年が勝負”このオフに田村の口から何度も聞いた。ポスト西川龍馬と騒がれて、自然と注目度も高まっている。
将来付けたい背番号とかある?
「いつかは背番号5を付けたいです。長野さん(長野久義)のことが子供のころから好きだったし、カープでは龍馬さん(西川龍馬)にもお世話になって、僕の憧れの番号です。もちろんまだまだまだ先の話ですが(笑)」
食事をしながらふと聞いてみた質問だったが、背番号5を付けた田村俊介を想像したらワクワクしてきた。普段はなんてことない世間話しかしないが、いざ野球のことになると人が変わる。
「龍馬さんとは食事にも何度か連れて行っていただき話もさせていただきました。そのときには『外野手もライバルが沢山いるけどその中で競り勝ってレギュラーを獲れよ』と言ってもらいました」
次に会うときには西川龍馬にも成長した姿を見せたい。しっかりと怪我を完治させて違和感なくスイングができる感覚がやっと戻ってきた。このオフから勝負はすでに始まっている。
来季は外野手のレギュラー奪取へ、自信はもちろんある。