益田武尚の1年間を振り返る。~黒原と男2人でNARUTO鑑賞会、内田は能力者、実家に帰ったらウサギがいた~
目が合うといつも明るく笑顔で声をかけてくれる。その人柄からも沢山のファンが増えたと思う。オフシーズンにはあらゆる場所でトークショーやメディアにも呼ばれていた。
そんな益田武尚の1年間。ルーキーイヤーを振り返ると、手応えはあまり感じられなかったという。
「前半戦は自分のピッチングが思うようにできないことが続き、悔しい想いもありながら焦りも沢山あった。その中で自分のやるべきことをしっかりと明確にして練習に励んできた」
後半戦については「少し良いボールもあったかなと思う程度で、1年間プロ野球という世界で闘うには不安要素がありました。まだまだやらないといけないなと感じた1年でした」と振り返った。
プラスな面では“気持ちの切り替え”をテーマにしたこと。毎試合、その日の最低限と最高目標を立てながら試合に入った。
「技術面では日によって体の調子も違うので、この変化球だったら浮かないようにしようとか、このバッターのときは最低限低めに投げ切ろうという感じです」
社会人野球からプロ野球へ。はじめはストライクゾーンの微調整にも苦労したという。
「最初は全然慣れなかったです。プロのほうがラインなどがきっちりしている感覚。その分上手くコントロールしようとしてファームでは四球が増えました。そこからは無理にコントロールしようとはせず、ちゃんと自分の球で勝負するイメージで投げました」
■ 両親はテレビで観ててすごく緊張したと言っていました(笑)
プロ入り後やっと掴んだ一軍初昇格。2023年8月10日、ついにその時がきた。神宮球場でのヤクルト戦でプロ初登板。ヤクルト村上宗隆、サンタナ、中村悠平を三者連続三振と堂々のデビューを飾った。プロ初登板は「緊張というよりは自分の100%のピッチングを見てもらおうと思ってマウンドに立ちました」と話す。試合終わり、家族が入っているLINEグループには両親から「ドキドキした」と連絡が入っていた。
プロに入り、先発から中継ぎへと配置転換。一日でも早く一軍に上がるためにも試行錯誤をしながらも与えられた場所で頑張ってきた。
「新井さんから『任せた』と言ってもらえたら、どのイニングからでもいけるように準備をするだけです。監督は僕から見てもすごく選手のことを考えてくれてるなと感じます。マウンドを降りたあと必ず近くまで来て『ナイスピッチ』と声かけてくれる」
ファームにいた頃にはかつて同じ背番号26を付けていた廣瀬純コーチから「少しムッとしているときには仕草が早くなってるよ」と、野手コーチから見た意見なども教えてくれた。
「最初はやっぱり焦りもありました。二軍でも自分のタオルを掲げてくれてるファンの方もいて、期待してもらえてるんだなと。ただ結果が全ての世界なので結果を残してチームに少しでも貢献したいと思いながらやっていました」
■ 益田武尚のプライベートな面
リラックス方法は入浴剤を入れてゆっくりお風呂につかることや、サウナ。そしてしっかりと睡眠を取ることだ。そのためにできるだけ移動の新幹線では動画などを観て、寝ないようにしている。ちょくちょく進めていたアニメ「ワンピース」は最新話まで全て観たらしく、次に観るアニメを探している。
チームメイトの黒原拓未投手にオススメを聞いたところ「アニメ『NARUTO』の最後の方」と言われたそうだ。
「昔最初の方だけ観たことがあるんですが、まさかの間をごっそり飛ばして、最後の方だけ観ても絶対に感動するんでって言われて、クロの部屋で観ました(笑)」
気がついたら涙がうるっとしてきた。
「やべ、、クロ、俺泣きそう」と言って、隣を見たら黒原もうるっときていた。さすがにそのときは男ふたりで何してんだと思ったという。
そして他にもチームメイトの話になるとよく登場する人物は、仲良し内田湘大選手だ。ずっとうるさいらしい。「少し落ち着いてほしい。あまりにも元気すぎて一緒にいると魂を吸い取られる」と話す。カープに入ってから気づいたらよく一緒にいることが多かった。年齢は6個下で可愛い弟みたいな感じだろう。
「シーズン中、寮が別々になった期間もずっとLINEをしてきます(笑)。端末上でも魂を吸われています。普通はあんなにうるさくできないので、多分何かの実を食べた能力者です(笑)」と益田は内田の話題を嬉しそうに話す。
そんな賑やかな寮生活を離れて、年末には福岡の実家に帰省して家族とゆっくり過ごした。久しぶりに帰った実家には新しい家族でウサギがいた。妹が3日間同じ場所にいたというウサギさんを心配して連れて帰ってきたらしく、警察に聞いたり、動物愛護関係に確認しても、新しい飼い主が見つからないと保護は難しいと言われ、可哀想だから自分たちで大切に育てようと決意した。
実は以前も益田家ではウサギを飼っていたことがあり、一緒の生活には慣れている。前の子は「ぴょんた」という名前だったが、初めて会うこの子の名前は知らないから「うさぎ〜」と呼んでいたらしい。
「可愛くて癒しになります。リビングにある座椅子にそのウサギが座ってて、僕は床です。譲ってあげました(笑)」
実家に帰った次の日から、年末年始も休まず毎日トレーニングをしてきた。今は以前よりも腕を少し下げた新フォームに取り組んでいる。社会人時代のチームメイトにサイドスローの投手がいたので相談に乗ってもらい、練習も見てもらったそうだ。新しいことに挑戦する怖さはあるだろうが、ひとつずつクリアしていきながら、益田は次のステージへと上がっていく。
ライター ゴッホ向井