未来の主砲として期待!田村俊介選手のスカウトと恩師が秘話激白【カープ道】
開幕スタメンをつかみ、カープファンの期待を背負う20歳のスラッガー田村俊介選手。広島ホームテレビ『カープ道』は、田村選手の素質を見出した広島東洋カープのスカウト、松本有史(ともふみ)さんをスタジオに招き、期待膨らむ背番号60の秘話を聞く。さらに、恩師・愛工大名電高校野球部監督、倉野光生さんにも、高校時代のエピソードを語ってもらう。
スカウト歴19年の松本さん。東海地方と、自身の出身校である亜細亜大学を担当し、菊池涼介選手、栗林良吏投手、堂林翔太選手、西川龍馬選手ほか、あまたの逸材を見出してきた。「4月9日の阪神戦のスタメンでは、野間、矢野、堂林、田村、菊池、床田と6人が自分の担当」と胸をはる。
2021年、ドラフト4位で愛工大名電高からカープに入団した田村選手。「高校時代はエースで4番。ピッチャーとしても145キロの本格派左腕で全球団が注目。他球団もピッチャーか野手か、どちらで選ぶか考えていたようだ。自分もピッチャーとバッターで報告書を書いて、両方で準備しながらドラフトに臨んだ」と、松本さんは振り返る。「バットのヘッドが下がらずに振れる。最短距離でボールをとらえてミスが少なく、どのコースにも対応できる」という優れたバッティング技術に目をつけ、カープとしてはバッターで起用。「バッティング技術はトップクラス。丸(佳浩)選手に近い。丸選手もドラフト4位。前田(智徳)さんも4位。ドラフト4位は活躍する」と確信する。
そんな逸材が腕を磨いたのが愛知県屈指の名門、愛工大名電高(愛知県名古屋市)。球界のレジェンド・イチローさんや、通算224勝をあげた工藤公康さんなどを輩出し、甲子園出場回数は春夏合わせて21回を誇る強豪校だ。チームを率いる監督の倉野さんは、田村選手について「入学当初から3年生のレベル。すでに150キロの打球スピードを1年から打てる。数日打ったら、どんどん上がっていく。これはすごい。一般的には130キロちょっとくらい。140キロですごいと言われるところを150キロ超える選手は、まずいないと思う」と、ベタ褒めする。
さらにピッチャーとしての資質も秀でていたそうで、「基本的なピッチングの技術はもちろん、試合における勝負所を一球で決めることのできる強さも備わっていた。いわば二刀流。このキーワードが彼にはピッタリあてはまる」と、倉野さん。さらに、「彼の魅力は内面にある。1年生でありながら、常に3年生の中に入っていく。このスポーツの世界では、力のあるルーキーが入ってくるとベテランは自分の場が危ういので厳しくなるのが普通だろうが、そういう気遣いを先輩にさせない魅力。青年としてパーフェクト。私は好き。ファンになるのはその部分」と、目を細める。
愛工大名電高・倉野光生監督
中でも印象的だった試合は、田村選手最後の愛知大会決勝戦。「先発が苦戦し、二番手に交代しようとした時。試合中にヒザを痛めていたにも関わらず、自分に投げさせて欲しいと田村選手が駆け寄ってきた。このままでの状況だと厳しいので、自分が流れを変える。3〜4イニングはもてるが、その後は他のピッチャーにお願いしたいと言った。試合を作った後、チームメイトに託すとは、すごい」と称賛。有言実行で見事流れを作り、チームは甲子園への切符を手にした。
スカウトの松本さんに印象に残っている試合を聞くと、「中京大中京高との練習試合という、私学4強と言われるチーム同士の戦い。相手ピッチャーは畔柳亨丞(くろやなぎ きょうすけ)投手(田村選手と同じ2021年にドラフト5位で日本ハムに入団)。スカウト20人くらいが見守る注目の試合で、田村選手が畔柳投手からライトスタンドにHRを放った」。驚くべきは、「その時、田村選手は骨折していたらしい。なのにHR。体のつくりがガッシリしている。太ももがとにかく太く、下半身がすごい」と大絶賛。
期待がかかる田村選手におくる金言として、恩師・倉野さんは、「バッティングに関しては、新井貴浩監督やチームの期待だと思うが、初球、第一ストライクをどんどん振る。三振を怖がらない。相手バッテリーへのプレッシャーにもなるし、田村選手の魅力を引き出すものでもある。いいところばかり求めてはダメ。自分と戦ってほしい」と。松本さんは、「プロのスピードにも対応できて、ミスショットが少なくなって、きっちり一球で仕留められるようになった。今後はずっとレギュラーでシーズンを終えられて、タイトルもついてくるように。“カープの田村”を見に試合に来たというお客さんが増えるように」と、エールをおくった。
広島ホームテレビ『カープ道』(水曜深夜) 5月1日放送
ライター 湯谷葉子