ケムナ誠「産んでくれてありがとう」大好きな家族とのやり取り。そしてチームメイトとの時間

「産まれてきてくれてありがとう」
「僕のほうこそ、産んでくれてありがとう」

 

今年の6月5日で背番号と同じ29歳になったケムナ誠投手。誕生日に両親と交わしたLINEのやり取りを教えてもらった。

「誕生日当日の朝に両親から長文のLINEがきました(笑)。産まれてきてくれてありがとうって感じの内容です。大好きな家族の存在はすごく有難いです」。

日頃からよく電話をするほど仲が良く、去年手術をしてからは「また怪我してしまっても意味がないから気をつけてね」など心配の言葉を多くかけてもらっているという。

そんな大好きな家族を安心させるために、ふたたび一軍へと戻る準備を着々と進めている。

 

 

■ 手術からの復活へ

2020年から3年連続で年間40試合を超える登板をこなし、チームのために腕を振ってきたが、昨年9月にその右肘にメスを入れた。

リハビリ中はチームがクライマックスシリーズで戦う姿を応援しながら、自分も来年こそは絶対にこの舞台で投げるんだと“復活”に向けて頑張ってきた。

 

そして今年5月、268日ぶりとなる一軍復帰登板を果たすことができた。この日の最速は153キロで1イニングを無失点で抑えた。

順調に階段を上っているかのように見えたのだが、5月26日に登録抹消になり、再びファームでの調整となった。

「一軍に推薦してもらって上で投げたんですが、内容が悪く満足のいく投球ではなかったので、もう一度ファームから真っ直ぐを鍛え直してくるように伝えられました」。

 

課題は高めに浮いていたストレートを低めに集めること。

新井貴浩監督や藤井ヘッドコーチからは「球自体は良い状態だから、もう一度バッターと勝負できるように、もっと低めに押さえ込められるようになって戻ってきてくれ」と激励された。

「クリーニング明けの1年くらいは、痛みがでる可能性もあると聞いていたので、肘の様子を見ながらですが、状態を上げて次にまた上に推薦してもらえるように続けていきます」。

納得のいく球で勝負できるように。今はストライク先行でのピッチングを意識して、それを継続できるように鍛え直している。

 

■ 同じ中継ぎ投手の仲間たちの存在

昨季セ・リーグの最優秀中継ぎ投手にカープから初めて島内颯太郎が選ばれた。

島内とは同じ中継ぎ投手ということもあり、自然と一緒にいる時間が多くなる。

そんな彼からある日の試合終わりに「ケムナさんは気にしずきているように見える」と声を掛けられた。

「島内は昨シーズン最優秀中継ぎ投手にも選ばれて、経験値も上がってますし、自信も付いてきています。そんな中で思ったことを話してくれるのは僕自身も助かりますし、年齢とか関係なくアドバイスをくれたのは嬉しかったです」。

もっと自然体で、もっとシンプルに打者と勝負をしていけるようにと、心に留めた。

 

そして他にも同じ中継ぎ投手陣の1人、矢崎拓也からも刺激を受けていた。

「矢崎さんは日頃から坐禅をしていると聞いていたので、本人にその話を聞いてみたりして、気になって禅についての本を買って読んでみたりしました」。

 

元々読書が趣味であったケムナは、何か野球に繋がるものはないかと気になった本を読み、その中で“日日是好日”という言葉に出会った。

「いろんな解釈の仕方や、捉え方があるかもしれないんですけど、『晴れの日もあれば雨の日もある、けれど晴れの日だけが良いって訳じゃなくて、雨の日にも雨の日なりに良いところがあるから、総じて良いことがありますよ』という風に思って過ごすように心掛けています」。

その瞬間瞬間を楽しめるようにと、前向きになれる言葉としてとても気に入った。

グラウンドでも目に入るようにとグローブにも刺繍で入れたり、大切にしている言葉だ。

 

“今日という日は二度と来ない”

一日一日を大切に過ごしていく。

 

これから先、まだ半分以上残っているペナントレース 。また一軍へと上がり、リリーバーとしてチームの勝利のために前進する。

 

ライター・ゴッホ向井

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