育成ドラフト2位中村貴浩の一部分
■中村貴浩とゴッホ向井ブルーの2分10秒
ゴッホ「野球以外で今までで1番嬉しかったことはなんですか?」
中村貴浩「嬉しかったこと…。」
ゴッホ「はい!野球以外であれば嬉しいです!」
中村貴浩「んー、なんだろ…。」
ゴッホ「全然些細なことでも大丈夫ですよ!」
中村貴浩「なんだろ…。嬉しかったこと…。」
ゴッホ「生放送じゃないんで全然ゆっくり考えてください!」
中村貴浩「んー、、野球…んー、、」
中村は止まった。軽い気持ちで聞いた、この”野球以外で…”という質問。答えが聞けたのは、この質問をしてから2分と10秒が経ってからだった。
「普通にご飯を食べてる時が幸せです。」
ついに聞けた。私の頭の中では”プロフェッショナル 仕事の流儀”の名言が出たときみたいに、ポーンとピアノの音も聞こえた。この文章を読んでくれている大半の方に、「そんなに待つほどどうしても聞きたかった質問か?」と思われてるかもしれない。そしてきっと彼も思ったに違いない「あれ?…この人、諦めないのかな…?」と。
■「苦手な食べ物はきゅうり」
『中村貴浩』九州産業大学から、育成ドラフト2位でカープに入団したばかりのルーキーだ。ファームでは高信二2軍監督、廣瀬純コーチ、新井良太コーチらみんなが口をそろえて「バッティングは貴浩がひとつ抜けている。素晴らしい打撃センスを持っている。」と評価している。ここでせっかくの流れを切らしたくない、とすぐに次の質問をした。
ゴッホ「では、最近食べた美味しかったものはなんですか?」
中村貴浩「あ、この前23年間生きてきて初めてCoCo壱のカレーを食べました。」
ゴッホ「え?生まれて初めてですか!?」
中村貴浩「はい。ずっと気になってはいました。食べたことないけん行ってみよって。」
ゴッホ「ちなみにメニューは何を?お米は何グラム?」
中村貴浩「野菜カレーでご飯は700グラムです。辛いのは得意じゃないので辛さは普通で。美味しかったです。」
ゴッホ「行ったことがないお店って他にもありますか?」
中村貴浩「ほかに…なんですかね…。」
私は彼の色んな箱を開けてみたくなった。結果、吉野家はある。すき家もある。松屋は行ったことがない。マクドナルドはある。モスバーガーもある。ロッテリアは行ったことがない。だった。
他にも色々と教えてくれた。好きな女性のタイプは身長が高い人、160〜170センチくらい、髪は長い方が好き。ちなみに好きな有名人は、乃木坂46の梅澤美波さんだそうだ。苦手な食べ物はきゅうり。ただし味が付いてたら食べられるそうで、きゅうりの漬け物は大丈夫。お寿司のいくらの軍艦巻きについてくる、あの小さいきゅうりも食べられないそうだ。もしも、朝起きて枕元に突然きゅうりがあったらどうする?と尋ねてみたら、「きゅうりを食べられる人に、なんか朝起きたらあったんで食べてくださいってお裾分けします。」とすぐに答えてくれた。
■ 野球漬けの毎日が幸せ
プロに入り、野球のことばかりを毎日考えながら過ごしている。自分が目指していた世界だ。もちろん毎日が充実している。中村貴浩には子供の頃から母親にずっと言われてきた言葉がある。それは「自分が好きなことをやってるんだから頑張りなさい」だ。何かあるたびにこの言葉をかけてもらって育ってきた。
両親とは毎日必ず連絡を取っている。母親からは「疲れてない?大丈夫?」と連絡を貰う。試合でデッドボールが当たったときにはすぐに「大丈夫?痛くない?」と連絡がくるそうだ。想像できない世界で頑張る息子のことを心配しないわけがない。息子から「大丈夫、元気だよ。」と返信があるだけでちょっとは安心してくれるはずだ。彼は口数は多くはない方だ。しかし、ひとつひとつの質問に対して真剣に考え、時間がかかっても思ったことを答えてくれる。
最後にもう一つだけ質問してみた。「ちなみに野球で嬉しかったことはなんですか?」と。少しだけ考えて、こう答えた。
「毎日野球ができて幸せです。子供の頃から大好きな野球を好きなだけやらせてもらったので、続けさせてもらった野球を大事にしたいです。目標は…今は一日一日結果を残すだけです。」
中村貴浩、背番号123番。
ここから毎日成長していく彼の今後が楽しみだ。目標のステージへと上がっていく日はいつになるんだろう。きっとそんなに遠くはない気がする。
取材・ライター/ゴッホ向井ブルー